シラバス
入学のご案内履修登録

科目の概要

グラフ理論は、ものとものの間のつながり方に着目した学問であり、離散数学分野における主要なトピックの一つである。今日では、ウェブシステムや交通網、電気工学、社会科学など、さまざまな分野に応用されている。本講義では、グラフという概念に親しんでもらい、グラフの持つ数理的な構造や諸定理を理解してもらうほか、工学・情報学的な応用例を多めに紹介する。

科目情報

履修想定年次
1年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
MTH-1-C1-0204-008
到達目標
本講義を通して、グラフ理論における基本的な用語の意味やその数学的な運用方法を理解することができる。また、現実の問題に対してグラフ理論的なものの見方をすることができ、もの同士・概念同士の関係性をグラフによって適切に定式化できる。さらに、グラフアルゴリズムを用いて、問題解決をすることができるようになる。
教科書・参考書
  • 【教科書】オリジナル教材【参考書】グラフ理論入門原書第4版(R.J.ウィルソン/近代科学社)2018、例題で学ぶグラフ理論(安藤清ほか/森北出版株式会社)2013、グラフ理論序説(仁平政一ほか/プレアデス出版)2010、グラフ理論入門:基本とアルゴリズム(宮崎修一/森北出版株式会社)2015
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。
特記事項
前提科目 なし 後継科目 組合せ論 2025年4月1日現在。内容が更新される場合があります。

授業計画

1
ガイダンス、グラフに親しもう

さまざまな具体例を通して、本講義で扱う「グラフ」とは何であるかを伝える。また、グラフ理論を用いてキューブパズルの問題が解けることを紹介する。

2
数学の復習とグラフの定義

集合や写像の記法や概念について確認した上で、集合を用いたグラフの数学的な定義について、単純グラフの場合に限定して述べる。

3
色々なグラフと一般グラフの定義

今後重要な役割を果たす特別なグラフ(完全グラフ・二部グラフ等)について紹介する。また、ループや多重辺を持つグラフ(一般グラフ)の定義の仕方についても紹介する。

4
オイラー・グラフ

「一筆書き」をテーマに、グラフ理論のきっかけとなった「ケーニヒスベルクの橋の問題」を扱う。小道・道・閉路や次数などの基本的な概念について述べたのち、オイラーによる解法を紹介する。

5
巡回セールスマン問題

グラフに関連する代表的な最適化問題である「巡回セールスマン問題」について扱う。巡回セールスマン問題がNP困難であることについて解説するほか、代表的な解法について述べる。

6
最短経路問題とダイクストラ法

重み付きグラフの2頂点を結ぶ最短経路を求めるアルゴリズムである「ダイクストラ法」について、そのアルゴリズムや計算方法を紹介する。

7
木と探索アルゴリズム

グラフ理論における「木」の定義や応用例を紹介する。また、木構造に格納されたデータを探索するアルゴリズムについて紹介する。

8
平面的グラフ

平面上に描くことができるグラフについての性質、特にオイラーの多面体定理との関係について議論する。

9
グラフの隣接行列、固有値

グラフの別表現である「隣接行列」を紹介する。隣接行列の積や固有値がグラフの性質をどのように反映させるのかについて述べる。

10
グラフ彩色①

「任意の平面地図は高々4色で塗り分けられる」という4色問題に関して、その歴史やグラフ理論に基づいた定式化について述べる。また、応用として基地局配置問題やスケジューリング問題との関係について述べる。

11
グラフ彩色②

4色問題について理論的に議論する。4色問題の一歩手前である5色定理について、その証明を紹介する。

12
有向グラフとネットワークフロー①

辺に向きがついたグラフ(有向グラフ)とその上を流れるネットワークフローについて定義する。PERT図や電気回路、インターネット等の具体例を交えて、まずは定義の直感的な理解を目指す。

13
有向グラフとネットワークフロー②

主定理「最大フロー最小カット定理」や、最大フローを求めるアルゴリズムである「フォード・ファルカーソンのアルゴリズム」を紹介する。後者が実は主定理の証明のキーになっていることについて触れる。

14
マッチング

二部グラフの完全マッチングが存在する必要十分条件である「ホールの結婚定理」とその証明を紹介する。後半では実はマッチングがネットワークフローと関係があることについて述べる。

15
WWWと複雑ネットワーク

実社会における巨大なグラフの例であるWorld Wide Web (Web) の持つ性質を議論する。また一般に、このような巨大なグラフ(複雑ネットワーク)の持つ性質や、これらを抽象化したモデルについて紹介する。

関連科目