意思決定の能力開発

意思決定とは選択と選択にいたる判断のことである。意思決定の結果は時に自分や周囲に大きな影響を与える。判断プロセスは目に見えないが、諸学問の知見を借りれば、それを理解し、使いこなすことが可能である。

複雑な世界を見る見方として、決定論的世界観、確率的世界観、カオス的世界観の3つを紹介する。また、インターネットなどを通じて、大量の情報が簡単に入手できるようになったが、情報の歪みについても理解する必要がある。

意思決定には、外部の情報と内部の情報、つまり記憶の双方を用いる。今回は、人間がどのように外部情報を処理しているかを考察する。我々は機械のように、外部の情報を一方的に処理しているのではないことを理解する。

記憶に従って、頻度の判断をすると、思い出しやすいものに影響されるし、ステレオタイプに判断が影響されることもあることを意識しよう。意外に記憶は頼りにならない。

情報データの提示のされ方、順序、表現等によって、判断は影響されないはずであるが、実際にはかなり影響される。判断の状況依存に関係する様々な現象やバイアスはたくさんあるので一つずつ理解していこう。

指数関数的に増える数字を実感することは非常に難しいこと、時系列データの数値の偶然的要素は平均に回帰することを理解しよう。また、数値データの定義や背景にある状況にも気を配ろう。

確率が絡む問題には、私たちの直観はほとんど機能しないということを覚えておこう。また、説明欲求や忍び込む決定論バイアスがあるので、因果関係を簡単に考えすぎないようにしよう。

今回は、意思決定の全体に影響し、最も厄介な確認バイアスと関連バイアスについて考える。また、認知的不協和の理論と自己実現予言、後知恵等の重要概念を学ぶ。

選択肢の選び方のことを決定方略と呼ぶ。決定方略には様々なモデルがあるが、それぞれ長所と短所がある。選択肢の数等に応じて、適切に組み合わせて意思決定し、優柔不断を防止しよう。

集団での意思決定には利点と欠点がある。集団の意思決定のプロセスも見えない。集団の意思決定に関する現象をよく理解し、適切にマネジメントしよう。会議の仕方についても触れる。

創造性は意思決定に影響する。創造性を発揮するには、一定のコツがある。異質を許容し、オープンなコミュニケーションを行おう。創造技法についてもまとめる。

基本的な思想として、功利主義、現代正義論、リバタリアン、平等主義を取り上げ、内容を確認する。社会の中での対処方法として、自分の倫理的ポジションを知っておく。

一般的には、組織環境の変化に対応する組織戦略の意思決定が重視されているが、最も重要なのは組織政策の意思決定で、これは組織文化、組織倫理に関わる。組織倫理が麻痺すると、早晩、社会問題を起こし、組織の存続が危ぶまれるようになる。

ナッジは行動経済学の知見を経営や政策に応用したもの、行動インサイトはより広く社会心理学上の知見も含め経営や政策に応用したものである。これらについて事例を中心にみていく。意外と使われていることに気が付く。

授業全体の締めくくりとして、メタ意思決定、究極の目的である幸福の価値観、決断、意思決定の改善の仕方について学ぶ。意思決定は人生に大きな影響を与える。そして能力の改善に終わりはない。