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科目の概要

最新科学の知見は、この地球が生命による惑星改造(テラフォーミング)の結果であると教える。だが酸素に満ちた大気を創った光合成生物も、大陸を「緑」の絨毯で覆った植物たちも、自分が地球を大改造しているという自覚はなかった。人類は地球史上初めて、自らの惑星改造のインパクトを現在進行形で認識し、未来を選択しうる種だ。「共創地球論」とは、そうした「共創する主体」として人間を位置づけ直した地球環境講義である。

科目情報

履修想定年次
1年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
SOC-1-C1-0204-004
到達目標
「人新世」Anthropoceneという新たな地質年代を創始するほどに、巨大な影響力を持つに至った人類。そんな時代に生きる世代として、人類活動の地球的なインパクトを包括的に再認識するとともに、文明転換と行動変容の方向性を、これまでの「生命と地球の共創(共進化)」の歴史も踏まえた地球的公益性の基準で見定める必要がある。その基礎となる知見を最新科学データをもとに共有し、地球的な課題解決を自分で考えてゆく力を育成する。
教科書・参考書
  • 竹村真一『地球の目線』PHP新書・2008年、坂本龍一・竹村真一『地球を聴く』日本経済新聞社・2012、竹村真一『宇宙樹』慶應大学出版会・2004
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
地球のOSを更新(アップデート)する人類ーー「持続可能性」Sustainability論/SDGsを超えて

「人新世」Anthropoceneとは人類活動の痕跡が地層に刻印されるほどの影響力を持つに至った時代。地球史における人間の位置を再定義し、人類の営為を「地球基準」ではかる新たな視座を構築する。

2
宇宙船地球号の基本OSを理解する

地球と創造的に共進化するには、地球という惑星の成り立ちやメカニズムをまず理解せねばならない。最新の地球科学の知見をもとに「宇宙船地球号」のOS(Operating System)について概観する。

3
地球観・宇宙観の更新史

人類は世界をどう捉えてきたのか?現代的な地球観・宇宙観に至るまで、世界はどのようにイメージされてきたのか?「神―人―宇宙」の関係、「静的」な世界観から「動的」な世界観への転換などを巡る。

4
地球OS更新史ーー「生命と地球の共進化」

宇宙も地球も初めからこのような姿であったわけではない。特に地球は宇宙のなかでも例外的にダイナミックな変遷・進化を遂げてきた。未来を構想するために、「地球の履歴書」の全体像を掴んでおく。

5
「人類世Anthropocene」の諸段階

人類は地球をどう変えてきたか?気候変動にどう適応してきたか?自ら気候変動を招くほどの影響はいつから始まったか?ごく最近追加された、人類という宇宙船地球号の新たな部品について考える。

6
地球の現状と人類の脆弱性

ようやく幼年期を脱しつつある人類。だが実情はいまだ移行期の混乱のうちにある。生半可なサステナブル戦略では間に合わないほど、人類社会が抱える課題は大きい。現代のシステムリスクを概観する。

7
幼年期を脱する人類文明

14世紀のペストは、ルネサンスと科学革命、近代資本主義を産み落とす陣痛だった。現代のコロナ禍と気候危機は何を産み出す陣痛なのだろう?新たに見えてきた地球基準の文明の萌芽を概観する。

8
地球のエッセンシャルワーカーとの協働・共進化

地球の未来は人類だけで設計するわけではない。微生物・菌類・植物など多様な「地球のエッセンシャルワーカー」から学びつつ、それらと創造的に協働する文明・社会のあり方を探る。

9
災いと恵み

最新の地球史研究は、人類が激烈な気候変動に適応してきたことを証明した。また災害は中長期的にみれば生態系と人類に恩恵ももたらす。災害や変動に対するリテラシーのアップグレードを図る。

10
「地球目線」の地政学

20世紀「石油の世紀」は人類文明に大きな飛躍とともに、中東パレスチナ問題など大きな禍根も残した。中国の「一帯一路」、インドやトルコなど第三極台頭のなかで21世紀の地政学を歴史的に考察。

11
次代の地球社会OSを探る

ポストSDGs, 「自然資本」の経済学、ブロックチェーンとDAO(自律分散組織論)など、次世代の地球社会のOperating Systemとなるべき思想の鋳型を探求する。

12
地球の生命・文化のホールアース・カタログ(過去―現在―未来の時間軸のなかで)

生物・文化的な多様性が危機に瀕するなか、それを次代の地球に継承するための「全地球誌」編纂が急務である。危機は新たな進化の揺籠でもあり、既存の環境と生物種を保護するだけではない動的な視点で考察する。

13
人はなぜ、何のために宇宙へ行くのか?

人類は宇宙に出て「地球」を発見した。この星が宇宙的にみてどれだけ例外的な条件を備えた惑星であるかを理解した。宇宙開発を通じて進化する地球システムと生命・人類の可能性を考える。

14
2050年の世界地図を描く

これまでの講義内容を踏まえ、未来の地球の姿、「2050年の世界地図」を構想してみる。未来をイメージするには、それを肉付けする素材が必要だ。日本の未来もその構想力のなかで設計される。

15
総括

全14回の講義の要点を包括的に振り返りつつ、「地球と人類の共創(共進化)」に向けた近未来の社会デザインと行動変容の方向性を展望する。

関連科目