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科目の概要

われわれが生活をする社会の安全保障にとって、情報通信や産業インフラの確保とともに社会の基盤にある価値観や倫理を理解し思索する力が大切になっている。この講義では、日本の総合的な安全保障を(1)個別的および集団的な自衛、軍備管理・軍縮条約といった外交・国際政治、(2)資源の確保や半導体のグローバルなサプライチェーンといった経済安全保障、(3)ハイブリッド戦争やサイバーセキュリティのような先端的な情報通信技術、(4)政治経済体制とイデオロギーや社会哲学、という4点を含むものとして捉える。この講義は(ⅰ)順次公開予定、(ⅱ)山内康英(担当教員)の2名が担当する。政治と行政の実務経験者および研究者の視点を通して日本の安全保障の現状と課題を学ぶ。

科目情報

履修想定年次
1年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
SOC-1-C1-0204-005
到達目標
「ビッグブラザー」の意見を受容するのではなく、安全保障という専門分野をどのような視点から分析し、さらにまた自ら調査研究するのか、という方法論が大事である。そのためには安全保障を日本の歴史的な政策の推移から理解するのが近道となる。この講義では(1)安全保障に関する組織と政府機構を含む具体的な政策および政治の決定過程、(2)1970年代後半以降50年間の日本の安全保障政策と政府の危機管理体制を学ぶ。これによって(3)国際政治学、戦略論、組織論、国際公法といった社会科学の分析枠組みを理解し具体的な社会事象に結び付けて解釈することを到達目標とする。
教科書・参考書
  • (1)重松博之監修、野中郁次郎、鈴木寛、山内康英編著『ワイズガバメント―日本の政治過程と行財政システム』中央経済社、2021年。(2)兼原信克、佐々木豊成、曽我豪、髙見澤將林『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』新潮新書、2023年。(3)野中郁次郎『知的機動力の本質―アメリカ海兵隊の組織論的研究』中央公論新社、2017年。
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
情報社会と総合安全保障に関する基本的な枠組みの説明

第1回の講義では、情報社会と総合安全保障について本講義で用いる基本的な分析枠組みを説明します。岸田内閣の打ち出した経済安全保障推進法や安全保障3文書、あるいはまたウクライナ紛争のハイブリッド戦争を考えると、従来の安全保障の枠組みを広げる政策の必要性が分かります。(山内康英)

2
サイバー空間とは何か/コンピュータ・ネットワークとグローバリゼーション

第2回の講義では、サイバー・セキュリティを理解するために必要なインターネットの技術的な基礎知識、電気通信事業者としてのISPの役割、情報革命の背景にあった1990年代初頭の各国の情報基盤政策などについて説明します。(山内康英)

3
日本の安全保障政策を「防衛3文書」から理解する

第3回のテーマは、1970年代半ばから1991年の東西冷戦までの日本の安全保障政策の概要です。この時期の日本の防衛政策を理解するためには「中期防」「大綱」「国家安全保障戦略」という防衛3文書を理解する必要があります。(山内康英)

4
2023年の「新たな国家安全保障戦略」と安全保障政策の新展開

2022年12月の安全保障3文書、つまり新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画は前回の講義で述べた防衛3文書の枠を越えるものでした。第4回は、この背景にあった新冷戦や東アジアの防衛体制における日本の役割について説明します。(順次公開予定)

5
組織論とイノベーションの観点から軍事組織を考える

産業の分野にイノベーションがあるように、安全保障の領域や軍事組織にも継続的なイノベーションが生じています。次の戦争を抑止するために各国の軍事組織は戦略、戦術、ドクトリン、あるいは軍事技術の側面からイノベーションに取り組むことになります。(山内康英)

6
東西冷戦下の日本の戦略構想と国際情勢の推移

第6回の講義では、第3回のテーマとして取りあげた70年代のデタントから1991年の東西冷戦の終焉までを日本の安全保障政策の観点から振り返ります。この時期の安全保障政策の中心は、米国とソ連の相互確証破壊と米国の「核の傘」いわゆる拡大抑止でした。(山内 康英)

7
東西冷戦の終焉は何をもたらしたのか?湾岸戦争、カンボジア国連平和維持活動、9.11と日本の安全保障政策の転換

第7回の講義では、1991年の東西冷戦の終焉に引き続いて、国際社会と日本の安全保障政策にどのような変化があったのか概観します。具体的には湾岸戦争、北朝鮮の核実験、国連平和維持活動と自衛隊の海外派遣、9.11同時多発テロ、イラク戦争、アフガン戦争、台湾海峡有事のシミュレーションなどを取りあげます。(山内康英)

8
70年代の石油危機および日米経済摩擦がもたらした日本の「総合安全保障 1.0」

1973年の第4次中東戦争を契機とする第1次石油危機、1978年のイラン革命を契機とする第2次石油危機と並行して、日本は米国との間に長期間にわたる貿易摩擦と外交交渉を重ねていました。これは現在の経済安全保障のなかの重要物資の安定的な供給の確保や先端的な技術製品のサプライチェーンに繋がるものです。(山内康英)

9
軍備管理軍縮と不拡散レジームによる国際社会の秩序形成/現状と課題

核不拡散条約やSTARTといった軍備管理・軍縮条約は国際社会の重要な秩序を構成しています。それでは軍備管理・軍縮条約は、これまでどのような国家間のパワーバランスの下で、また政策決定者のどのような意図と働き掛けによって作られてきたのでしょうか?第9回はこのテーマを取りあげます。(順次公開予定)

10
サイバーセキュリティについて考える/政策的な課題と対応

情報革命としてのインターネットは自律・分散・協調的な活動としてグローバルな情報基盤を構築しました。しかしこれは同時にハッカー集団、組織犯罪、各国の情報活動や軍事に新しい活動の場を提供することになりました。第10回の講義ではこの問題に対する日本の政策的、制度的な取り組みを説明します。(順次公開予定)

11
情報社会と「監視資本主義」のリスク/プラットフォーム規制の動向

インフォデミックとは2020年に突発したCOVID-19に伴う情報混乱に対してWHOが命名した言葉です。これとは別に利用者のデータに基づいてAIが提供するリコメンド機能や検索サービスと結び付いた広告販売は巨大プラットフォーム産業に膨大な利益をもたらしています。第11回の講義では、この問題を監視資本主義とアルゴリズム規制の動向から検討します。(山内康英)

12
情報社会と安全保障政策の展開/「総合安全保障 3.0」と分野横断型統合

これまでの講義で説明した安全保障上の諸課題は、日本の政策としてどのように具体化しているのでしょうか。第12回の講義では、現在の安全保障政策が政治、経済、社会の諸分野を統合する「総合安全保障」の観点が必要であるとして、この問題を取りあげます。(順次公開予定)

13
イデオロギー対立と政治経済体制および「新しい資本主義」の検討

東西冷戦の背景にあったのは資本主義および社会主義というイデオロギー対立です。イデオロギー対立は国家の政治経済体制という憲法問題に結び付いています。それでは現在の日本の政治経済体制はどのように規定され、どのような課題があるのでしょうか。第13回はこの問題を取りあげます。(山内康英)

14
リベラリズムと熟議/日本の近代化と社会思想

第14回の講義では、日本の明治以来の近代化の根底にあるリベラリズム=自由主義について理論的および実践的な側面から検討します。この講義ではリベラリズムを正義の諸構想、マルクス主義、革新と保守、大衆社会と公共圏といった論点から説明します。(山内康英)

15
日本の社会的なリスク管理と政治決定過程および組織構成

第15回の講義では、1970年代後半以降50年間の国際社会の主要な安全保障の事件を振り返って、これに対する日本の危機管理体制の推移を検討します。今回の講義では、実務者の観点から実感的な危機管理のポイントと、危機・リスク管理に関する情勢判断の要諦について説明します。(順次公開予定)

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