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科目の概要

本科目では、キャッシュの観点から見たリスクやリターンに加えて事業の資金調達について取り上げる。企業価値の時価をどうやって計算するか、有利子負債と自己資本からなる資本構成をどうやって最適化するかの基礎的な考え方を解説し、理解してもらう。さらに将来のプロジェクトを評価する方法、スタートアップの資金調達、M&Aやグループ企業の財務最適化についての基礎を考える能力を養う。

科目情報

履修想定年次
2年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
ECON-2-C1-0204-003
到達目標
本科目を通して学生はキャッシュを取り扱う方法についての理解を開始する。プロジェクトのリスクやリターンの評価、企業価値の時価の計算、事業の資本構成である有利子負債と自己資本をどのようにつけるかの概念や考え方を適切に理解し、伝えられるようになる。さらに進んで事業のスタートアップや経営環境の変化に対応するM&Aの概念や考え方を適切に理解するための基礎を身につける。
教科書・参考書
  • 村藤功「コーポレート・ファイナンス―日本の実務に役立つ」中央経済社(2006/1/1)石野雄一「「知識ゼロ」の人のための超ざっくり分かるファイナンス」光文社(2022/6/21)
授業時間外の学修
各回の授業内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学修内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回三時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
ファイナンス:イントロダクション

まず企業財務の学び方やカバーされる範囲を理解する。企業における財務担当者の役割、会計と違ってキャッシュに注目し、キャッシュの出入りを把握して価値を考えられるようになることをめざすことを理解する。

2
基礎概念編:お金の時間的価値

キャッシュの価値は時間により異なることを理解する。時間を変えれば価値は変わる。同じキャッシュが永遠に続く永続年金とキャッシュが成長する永続成長年金の現在価値の簡易な計算方法について学ぶ。

3
基礎概念編:企業価値の定義とフローとの関係

事業価値、企業価値、自己資本価値の定義と違いを理解する。本業の企業価値は事業価値と投融資の合計で、有利子負債から現預金を引いた純有利子負債と自己資本という資本構成で支えられていることを学ぶ。

4
基礎概念編:投資家から見たリスクとリターン

リターンの分散で定義する財務上のリスクについて学ぶ。ファイナンスでは、リスクフリーレートにマーケットリスクに応じたリスクプレミアムを足したCAPMがリスクに見合ったリターンであることを理解する。

5
基礎概念編:事業会社から見た調達コスト

キャッシュフローを加重平均資本コストで割り引いたNPVがプラスになるかどうかで事業評価を行うことを学ぶ。これは投資家にリスクに見合ったリターンを提供できることを確認するものである。

6
資金調達編:短期資金資金調達

事業では短期の運転資金が必要で、運転資金は変動するので短期資金計画を作って銀行から資金調達する必要があることを理解する。どのように短期資金計画を作って必要資金を調達し資金不足に陥らないかを学ぶ。

7
資金調達編:長期資金調達

短期の運転資金だけでなく設備投資や固定資産が必要なことがあり、これを支えるために長期借入や社債の調達を考える場合は、中長期的な返済計画や財務状況の維持が必要になることを学ぶ。

8
企業価値編:時価評価

企業価値の時価の計算方法について学ぶ。事業価値や投融資を時価評価して合計した企業価値の時価から純有利子負債の時価を引けば自己資本の時価になることを理解する。上場企業の場合は株価から株価総額を計算できる。

9
企業価値編:有利子負債の利用と企業価値

有利子負債を使えば金利の節税効果で平均資本コストが下がるが、使いすぎれば財務が悪化し金利が高くなることを学ぶ。有利子負債と自己資本の適切な組み合わせで平均資本コストを下げて企業価値を最大にできることを理解する。

10
企業価値編:株式の評価

非上場株でも企業価値の時価評価をして純有利子負債の時価を控除し、株価総額を計算できることを学ぶ。企業は利益の一部を配当することが多いが、内部留保して事業投資に回し利益を成長させる選択肢もあることを学ぶ。

11
企業価値編:プロジェクト分析

不確実な将来の処理方法として、感度分析をすることもできるが、経営環境の変化とこれに応じた意思決定の選択肢を織り込むデシジョンツリーを書いてプロジェクトの価値を高めるやり方もあることを理解する。

12
総合編:スタートアップのファイナンス

新規事業は将来はともかく始めは投資が必要であることが多い。ベンチャーキャピタルは将来が見込めればキャピタル・ゲインをとれるエグジットを前提に自己資本に投資してくれることがあることを学ぶ。

13
総合編:M&A

水平統合や垂直統合などM&Aの理由について学ぶ。一株当たりの利益が上がっても成長力が下がれば困る。M&Aはシナジーがコストを上回りNPVがプラスにならないと株主のためにならないことを理解する。

14
総合編:グループ企業の財務最適化

グループ企業の資本構成は事業ポートフォリオに合わせて設定する必要があることを学ぶ。事業ポートフォリオの自己資本ニーズが現状不足しているときは早めに自己資本を調達しなければならないことを理解する。

15
総合編:グローバル企業のファイナンス

事業会社は本業に集中し、大きな為替リスクはとるべきでないことを理解する。輸出入の為替リスクは金融機関に移転できるし海外の現地通貨建て資産があれば負債の一部も現地通貨にして為替リスクを縮小できることを学ぶ。

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