シラバス
入学のご案内履修登録

科目の概要

「方法なき方法論」とかつて吉本隆明に批判された柳田國男の民俗学が集合知としての「歴史」や「社会」を構築する「方法」それ自体にあったことを時間軸に沿って説明し、その問題系と方法、そしてアカデミズムによって知が分断される以前の総合性が現実及びオンラインの社会にどう「接続」するかを考える。また、柳田の学問が山人論に向かうロマン主義的側面と主権者教育運動の双極性を持つことの理解を通じ、その一方からしか語られなかった民俗学の全体像を講義する。

科目情報

履修想定年次
2年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
HUM-2-C1-0204-006
到達目標
柳田國男の学問の双極性を理解しその全体像を理解する視点を獲得すると共に、「現在」という文脈の中でいかに活かしていくか、その基本的知見(柳田の定義する「史心」)を獲得する。特に柳田民俗学が内在する「方法論」及び社会性について理解するとともに柳田の民俗学構想がオンラインの時代以前にあっていかに先駆的に情報論的思考に支えられていたのかを理解する。
教科書・参考書
  • 大塚英志編「柳田國男山人論集成」(角川ソフィア文庫、2013年),「柳田國男民主主義論集」(平凡社ライブラリー、2020年)
授業時間外の学修
講義で言及した柳田の文章について改めて自身であたること。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
柳田國男の双極性 ロマン主義民俗学と公民の民俗学

柳田民俗学の「わかりにくさ」と理解する視点を学ぶ。

2
もう一つの自然主義 文理融合の民俗学

柳田國男の方法の基調にある自然主義について理解する。

3
山人論とはなんであったか

柳田民俗学の初期の学説である山人論の成立の背景と意味について理解する。

4
農政学と「協同」する社会 柳田國男の公共政策論

柳田國男の経世済民の思想について理解する。

5
異界と妖怪 ロマン主義と科学

柳田民俗学のパブリックイメージでさえある妖怪や異界イメージの自然主義的超克について理解する。

6
大衆と普通選挙 主権者教育としての民俗学

柳田民俗学が普通選挙を踏まえた主権者教育運動としての性格があることを理解する。

7
柳田民俗学の情報論的構想

柳田民俗学の体系化の過程で情報論的な構想があったことを理解する。

8
柳田國男の方法論

柳田の方法論を写真論・映画論を手掛かりに考える。

9
戦争と暴力の民俗学

柳田民俗学が暴力と戦争をどう理解したか考える。

10
児童生存権の民俗学

柳田國男の子供観を生存権を中心に理解する。

11
戦時下の民俗学

戦時下の民俗学と国策との関係を批判的に理解する。

12
「先祖の話」と固有信仰論

「先祖の話」の基調となる固有信仰論を批判的に検証する。

13
柳田國男とジェンダー

柳田民俗学における家・婚姻・女性の問題がどう立論されたかの問題点を含め理解する。

14
柳田國男と国語教育

柳田國男が「国語」をいかに改良しようとしていたか理解する。

15
「世間」と「社会科」

柳田國男の社会科教科書制作の検証を通してその「公共」概念の変遷を理解する。

関連科目