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科目の概要

私たちの知覚や記憶や感情が生み出されるのは、脳のどのような働きに基づいているのだろうか。認知神経科学(認知脳科学)は、このような知的興味から生まれた学問分野である。ここでは、知覚、認知、記憶、またそれらの発達的な変化などのいくつかの現象の背後にある脳の働き、具体的には脳のどのような部位が協力し合っているのかについて、研究現場の雰囲気を交えて解説する。

科目情報

履修想定年次
2年次
単位数
2単位
開講Q
1Q、3Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
HUM-2-C1-1030-001
到達目標
本授業において研究現場の具体的な雰囲気を知ることで、認知神経科学の最新の知見を適切に理解し、自身の言葉で整理・編集し、他人に伝える力を身につける。また、自身の認識や行動の背後にある脳の働きやメカニズムを理解することで、より効率的な学修や問題解決法を打ち立てる力を身につける。さらに、脳や行動を研究するための技術についても学ぶことで、情報技術の社会における役割を理解する。そして、心と脳の発達や老化の理解を通じて、人間の心理や行動に対する理解を深め、それを社会生活や職業生活に活かす力を伸ばす。
教科書・参考書
  • 嶋田総太郎『認知脳科学』コロナ社,2017年
授業時間外の学修
次回の学習内容について、あらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。授業後は、講義内容を繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行なってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
「見ること」と認知神経科学の枠組み

「見ること」を認知神経科学の視点から探求し、生物学的ハードウェアと知覚現象、脳の処理の特徴、適応、知覚的順応と残効、長期的な脳の適応について理解を深める。

2
感覚系の構造

視覚の機能領野、聴覚系、体性感覚系を理解し、脳損傷と失認の関連から分かったことを学ぶ。さらに、感覚系構造のモデルと選択的注意についても深く学び、感覚系の理解を深める。

3
感覚運動系

感覚運動系の原則や運動関連部位について学び、エファレンスコピー、身体図式などの理解を深める。中枢における感覚運動プログラムやミラーニューロンについても探求する。

4
身体性認知

身体性認知について理解を深め、幻肢や道具使用と身体図式の可塑性について学ぶ。また、手の心的回転における運動イメージや、その神経基盤、発達、加齢変化についても取り扱う。

5
脳と心の発達

脳と心の発達を深く理解するため、発生から誕生までの赤ちゃんの脳の特徴や初期経験の影響について学び、誕生後の神経結合とシナプス刈り込み、大脳皮質や白質の発達についても習得する。

6
逆さメガネ実験をめぐって

視野を逆さにする「逆さメガネ」実験について、なぜそのような実験をするのかを考えたのち、ヒトは逆さの視野にどのように適応するのかを、いくつかの側面から見ていく。

7
脳機能計測からみた認知機能

脳機能計測の侵襲的・非侵襲的方法を学ぶ。PET、fMRI、NIRS、EEGなどの非侵襲脳計測技術を通じて、認知機能を探求し、各計測方法を比較する。

8
聴覚と音声知覚

音と聴覚について学び、ラウドネス等感度曲線と音声の関係を理解する。さらに、内耳の位置による感受性の違い、人工内耳について学んだのち、人工内耳装着者の音声知覚とその個人差に関する研究について学ぶ。

9
視聴覚音声知覚とその発達、言語差(1)

視覚と聴覚を通じた音声知覚の理解を深め、その発達や言語差について学ぶ。読唇やMcGurk効果も取り扱い、視線計測や脳電位を通じた視聴覚音声知覚の言語差に関する分析も学習する。

10
視聴覚音声知覚とその発達、言語差(2)

視聴覚音声知覚やその発達、言語差の理解を深める。McGurk効果の復習をしたのち、視聴覚音声知覚の加齢変化に関する研究、脳活動部位から視る視聴覚音声知覚の言語差に関する研究、乳幼児期の視聴覚音声知覚の発達に関する研究について学ぶ。

11
記憶の過程

記憶の役割から始め、記憶の存在を調べる方法を学び、記憶を時間的な長短で分類する方法に従って、記憶のいくつかの種類について、その特徴を理解する。最後に、記憶を促進する方法についても学ぶ。

12
記憶と脳

記憶の神経基盤について、記憶の固定化、長期記憶、ワーキングメモリ、運動技能、潜在記憶などの分類に従って、学んでいく。

13
加齢による認知機能の変化と個人差

超高齢社会の現状を理解し、逆発生の概念とその応用を学習する。また、認知機能の加齢変化や、高齢期の脳活動の変化や構造的な脳萎縮について学ぶ。さらに、高齢者の認知機能を調べる方法についても深く学ぶ。

14
ライフスタイルと脳のアンチエイジング

高齢期の個人差や認知予備力について学び、認知症リスクを抑えるライフスタイルを理解する。運動介入、楽器介入、ダンス介入などの具体的な研究事例を通じて、脳のアンチエイジングに重要なことは何かを考える。

15
認知神経科学とは

本授業を通して、認知神経科学においては行動指標と神経指標の両面からのアプローチが重要であることを講義した。ここでは、その実際を、複数の研究事例を通じて復習し、学問領域の特徴やこれからの認知神経科学の可能性を考える。

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