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科目の概要

今日の我々の生活は、科学なしには考えられない。それとともに、「科学的である」ということは「正しさ」の基準のように捉えられている。しかし一体、「科学的である」とはどういうことだろうか?実のところ、科学という営みは実に多様であり、一言で定義できるものではない。本講義では、そうした多様な科学的営みを支える「科学的な考え方」や「推論の仕方」を、科学哲学の観点からあぶり出していくことで、過去、現在、そして未来の科学のあり方を考えていく。

科目情報

履修想定年次
2年次
単位数
2単位
開講Q
1Q、3Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
HUM-2-C1-1030-002
到達目標
「科学とは何か」という問いに、自分なりの答えを導き出せるようになる。特に、メディアなどで報道される科学的成果を絶対確実な「真実」として無批判的に受け入れるのではなく、かといって闇雲に懐疑的になるのでもなく、それがどのようなプロセスと方法から導き出されたのかを客観的にイメージし解釈できるようになる。「科学」と呼ばれているものは決して一枚岩ではなく、様々な目的を持つことを理解する。また科学が我々の社会および生活に及ぼす影響を理解し、その関係性を考えることができるようになる。
教科書・参考書
  • 【教科書】オリジナル教材【参考書】『科学哲学』(サミール・オカーシャ/岩波書店、2008年)
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行う。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行う。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
オリエンテーション

授業の概要、目標について説明する。

2
科学の歩み

近代科学革命以降の物理学・化学・生物学・社会科学の発展を概観することで、科学とはどのような営みなのかのイメージを掴む。

3
科学的仮説とは何か

科学的仮説とは何かを理解することで、科学的仮説の基準としての正当化の概念の重要性を理解する。また正当化への複数のアプローチを紹介する。

4
ポパーの反証主義と疑似科学

ポパーの反証主義と、それによる疑似科学批判を概観する。また同時に仮説演繹法を用いた反証の問題を理解する。

5
仮説の確証と帰納の問題

仮説を確証する方法としての帰納推論の論理的形式を、予測・一般化・アブダクションの3つに分けて理解した上で、それらにまつわる原理的な困難を学ぶ。

6
科学と正当化

科学における「正当化」の概念の重要性を再度確認した上で、正当化と客観性を担保するための近年の科学における様々な取り組みを紹介する。

7
科学的説明:法則

科学的法則による説明の論理形式を学んだ上で、法則と「法則モドキ」を区別することの難しさを指摘する。その上で、法則の反事実的性格を理解する。

8
科学的説明:因果性

科学における因果的説明を概観した後、因果的説明の特徴、特に単なる予測との違い、介入や反事実性との関連性を学ぶ。それによって、7回で問題となった法則的説明の問題を解決する。

9
科学的説明:モデリング

モデルを用いた科学的説明を、複数の事例を用いて概観する。またモデリングにおける抽象化や現実との対応関係などの特徴と問題を学ぶ。

10
還元主義

還元主義の考え方を、物理学と生物学の事例を通じ紹介する。また存在論的還元と認識論的還元の違いを理解した上で、非還元的思考としての創発と多元主義を学ぶ。

11
科学的真理

科学的実在論が抱える問題を紹介した上で、その対案として、科学の目的を有用性に捉えるプラグマティズムの考え方を学ぶ。また、そもそも「真理」や「実在」がどのような役割を持つのかを考察する。

12
科学の変化と科学革命

発展史的な科学観へのオルタナティブとしてのクーンのパラダイム論を学び、科学パラダイム間の通約不可能性の概念を理解する。

13
科学と多様性

科学におけるジェンダーや人種・社会属性のアンバランスが招く問題を理解した上で、それを改善するための方法としてのフェミニズム科学の考え方を学ぶ。

14
科学と規範

科学は価値とは独立であるという理念を確認した後、それでも歴史上は科学と価値は不即不離の関係であったことを理解し、科学と価値の間の有り得べき関係性を探る。

15
AI時代の科学

これまでの科学のあり方がAI技術の進展によってどのように変化しつつある・するのかを考察し、今後の科学のあり方を考える。

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