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科目の概要

数学の普遍性は、それが「構造についての学」であることによる。普遍性を可能にするのは「異なる現象について同じさを考えること」であるが、その「同じさ」とは結局「構造の同じさ」だからである。本講義では、数学において研究されている構造すなわち「数理構造」の様々な具体例を「圏論」と呼ばれる分野の基礎概念を導きの糸として学び、「数理構造とは何か」について各人がより明晰な理解を得ることを目指す。

科目情報

履修想定年次
2年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
MTH-2-C1-0204-001
到達目標
現代数学における「圏」の概念やその様々な例を学ぶことを通じて、「数理構造とは何か」を理解できるようになる。特に、数学的対象の間の「同じさ」は唯一つに定まるものではなく、様々な「同じさ」を措定することが可能であることを知り、むしろその一つ一つの「同じさ」こそが数理構造を規定するということを理解する。同時に、より進んだ数学を学ぶ上で基礎となる諸概念(線型空間と線型写像、位相空間と連続写像など)に親しむ。
教科書・参考書
  • 【教科書】オリジナル教材【参考書】圏論の道案内(西郷甲矢人・能美十三/技術評論社)2019、数学その形式と機能(S.マックレーン(赤尾和夫・岡本周一訳)/森北出版)1992
授業時間外の学修
各回の授業内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学修内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回三時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1

「異なるものの間の同じさ」を考えることから浮かび上がってくるのが「数理構造」であることを理解するとともに、今後の講義の基盤となる「圏」およびそれを構成する「射」の概念を学ぶ。

2
前順序

圏の例としての「前順序集合」について学ぶ。また、「関係」を集合として捉える方法を理解し、「同値関係」や「順序関係」の概念に習熟する。

3

順序関係の復習を踏まえて、「束」の概念について学び、「順序」を「代数的」に捉えることができることを理解する。特に「ブール代数」の概念に習熟する。

4
モノイド(単系)

「前順序集合」と並ぶ圏の重要な例としての「モノイド(単系)」やその間の「準同型」について学ぶ。モノイドの概念は抽象的に見えるが、身近な具体例があること、「作用」の概念とつながることを理解する。

5

特殊な圏としてのモノイドのうちすべての射が可逆である「群」や、その間の「準同型」について、具体例を踏まえつつ理解する。

6
関手と自然変換

モノイドや群の間の「準同型」の概念を一般の圏の間の「関手」の概念へと拡張する。さらに、「関手の間の射」としての「自然変換」の概念、そして「関手圏」の概念を理解する。

7
集合と写像の圏1

圏の重要な例としての「集合と写像の圏」に焦点を当て、そこでの「同型射」「単射」「全射」の概念を学ぶ。また、それらの概念を一般の圏の場合に拡張する。

8
集合と写像の圏2

「集合と写像の圏」を例にとりながら、「終対象」「積」を始めとする圏論的な諸概念を学ぶ。圏論的な立場から見た「集合論」についても触れる。

9
線型空間と線型写像の圏1

「線型空間」および「線型写像」の概念を学び、それらのなす圏について調べる。同時に「行列」についても理解を深め、「線型表現」の概念にも触れる。

10
線型空間と線型写像の圏2

「線型空間と線型写像の圏」についての理解をさらに深める。テンソル積、核と像といった現代的な線型代数の基本概念、さらには環と加群の概念にも触れる。

11
たたみこみの代数

「代数」の概念について学ぶ。特に、「たたみこみ代数」の概念に焦点を当て、圏上のたたみこみ代数である「圏代数」の概念とその身近な具体例について理解を深める。

12
内積・ノルム・距離

内積・ノルム・距離などの基本概念から初めて、ヒルベルト空間やバナッハ空間の概念やその展開について概略的に触れる。

13
位相空間と連続写像の圏

距離空間の間の「連続写像」の概念を学び、それを一般化しようとするなかで「位相空間」およびその間の「連続写像」の概念に至る。「ホモロジー理論」の考え方にも触れる。

14
圏論がもたらす展望

圏論の基本概念をまとめ、それがもたらす展望について学ぶ。ゲルファント双対性やガロア理論の「考え方」にも触れる。

15
数理構造とは何か

これまでの講義を振り返り、改めて「数理構造とは何か」を考える。圏論の基本的な結果である「米田の補題」やそれがもたらす展望についても触れる。

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