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科目の概要

量子力学とは何か、その歴史と基本的な理論体系を学ぶ講義である。線形代数や微分積分の知識を前提に、量子性と呼ばれる4つの特性「物理量の離散化」「状態の重ね合わせ」「不確定性」「エンタングルメント」を学ぶ。できるだけ計算の煩雑性に惑わされずこれらの本質に迫るため、2準位量子系(量子ビット)やダイヤモンドのNV中心などの有限次元モデルを中心に講義する。オンデマンド授業という形式をとり、各回の講義内容は繰り返し見直し、必要に応じてWebでの調査も行いつつ、理解を深めることを目指す。評価は確認テストとレポート、及び単位認定試験による。本講義を通じて、量子力学の考え方を理解しそれを用いて物理現象を説明できる力を養う。

科目情報

履修想定年次
3年次
単位数
2単位
開講Q
2Q、4Q
科目区分
選択
授業の方法
オンデマンド科目
評価方法
確認レポート 50% , 単位認定試験 50%
科目コード
MTH-3-C1-0204-007
到達目標
量子力学とは何か、どのような対象に適用されるのか説明できるようになる。4つの量子性「物理量の離散化」「状態の重ね合わせ」「不確定性」「エンタングルメント」について、一般書レベルを超えて専門的に説明ができるようになる。また、シュレーディンガー方程式を用いて量子系を解析する方法を身につける。
教科書・参考書
  • 【教科書】オリジナル教材【参考書】現代の量子力学(JJサクライ/吉岡書店)2022
授業時間外の学修
各回の授業内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学修内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回三時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
量子力学への誘い

量子力学の基本的概念とその歴史から、日常生活との関わりまでを概観する。適切な学修方法も共有し、授業全体の理解を深める。

2
量子性 1:物理量の離散化

量子性とその具体的な現象、例えば光電効果や水素のスペクトル線、シュテルン・ゲルラッハの実験の解説を通して、物理量の離散化という量子力学の著しい特性を学ぶ。

3
量子性 2:状態の重ね合わせ

シュテルン・ゲルラッハの実験や光の偏光について学び、量子状態とベクトルの理解を深める。状態の重ね合わせについての理解を進め、量子性の理論的な側面を探る。

4
波動関数と測定

波動関数と測定の理論を学び、確率について深く理解する。更に、二重スリット実験を通し、量子力学の基本原則を身につける。

5
シュレーディンガー方程式

シュレーディンガー方程式を導入し、量子状態の時間発展とハミルトニアンについて学び、2準位系の時間発展を例に方程式の意味や運用方法の理解を深める

6
エネルギー固有値・固有状態

エネルギー固有値・固有状態に関する理論を理解し、基底の変換方法を学修する。さらに、エネルギー固有基底の有用性を理解し、ブラ・ケット記法の読み書きを修得する。

7
量子力学の理論体系のまとめ

量子力学の理論体系を包括的に学ぶ。量子状態とベクトル、時間発展とシュレーディンガー方程式、物理量とエルミート演算子、測定と確率、物理量の期待値の理解を深め、計算法を修得する。

8
角運動量とスピン

量子力学の枠組みと対称性について学び、空間並進と運動量、回転と角運動量の関連性を理解する。角運動量代数を学修し、その行列表現を扱う。最後に、スピン1/2とスピン1の行列を運用できるようになる。

9
量子性 3:不確定性

量子性の著しい特徴である不確定性を理解し、物理量の分散や非可換性との関わりをスピンの具体例を通して学ぶ。様々な文脈で現れるいくつかの不確定性関係についても探求する。これにより量子力学の理解をさらに深める。

10
ダイヤモンドの NV 中心

ダイヤモンドのNV中心の有効モデルを例に、量子力学に基づく思考法と解析法に習熟する。窒素・空孔(NV)中心の概念から、スピン1の有効ハミルトニアン、エネルギー固有値・固有状態、外部磁場の影響について、物理的な視点から学んでいく。

11
連続空間上の量子系 1:状態ベクトルと演算子

連続空間上の量子系の取り扱いを学ぶ。状態ベクトルと波動関数の理解を深め、ディラックのデルタ関数を学ぶ。さらにハミルトニアンと正準量子化についても理解を深める。

12
連続空間上の量子系 2:エネルギー固有状態の例

厳密に解ける無限井戸型ポテンシャルや調和振動子、水素原子などのエネルギー固有状態を概観し、連続空間上の量子系の理解を深める。

13
量子系の操作・制御

量子ビットやNMRといった応用で重要な、ラーモア歳差運動やラビ振動について学修する。これらを通じて、量子系の操作・制御の手法の理解を深める。

14
複数の量子を記述する理論

複数の量子を記述する理論を修得する。量子状態の記述から始め、ハミルトニアンや物理量、独立な量子系、相互作用する量子系を理解する。さらに、エンタングルメントの概念を計算を通じて学ぶ。

15
量子性4:エンタングルメントと局所実在論

量子論の著しい特徴であるエンタングルメントと局所実在論について理解を深める。アインシュタインの問題提起やベルの不等式の導出とその破れについて学ぶ。最終的に全ての内容を振り返り、量子力学のエッセンスを確認する。

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