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科目の概要

日本は多元的な代表民主主義あるいは自由民主主義および議院内閣制という政治体制をとっています。日本の政治過程は毎年の国会審議や首相官邸と各省庁の政策過程というループもしくはサイクルとして回っているわけです。皆さんにとっては将来的に、この政治のループに何らかの形で関わる能力が大事になります。本授業では「社会に関わる能力」の一環として政治的な実践力を捉え、この観点から日本の政治制度に焦点を当て、関連する政治学、政治哲学、政策決定過程、行財政について説明します。ここでいう政治とは、政府や地方自治体など公的機関(public sector)に関連した活動全般を指しています。現在の政治は、市場経済における企業の活動やインターネット上での市民の活動と密接に結び付いて社会全体の相互作用を作り出しています。このような民主主義のプロセスや政治決定が、どのような形でわれわれの社会生活に結び付いているのか、この授業では具体例を交えて検討します。

科目情報

履修想定年次
3年次
単位数
2単位
開講Q
3-4Q
科目区分
選択
授業の方法
演習科目
評価方法
レポート・成果物50%、発表・発言50%
科目コード
SOC-3-C3-0034-005
到達目標
この授業の目標は「社会に関わる能力」の一環として政治的な実践力を考えることです。このためには、①規範的な政治理論(normative political theory)と、②経験論的な政治学(empirical political science)の双方を理解する必要があります。この授業を、政権や政府が日本ではどのように動いているのか、具体的な政策形成に関わるとすればどのような切り口があるのかを理解する一助にしてください。これとは別に皆さんが国政選挙の投票に行った結果として内閣と政権が成立します。高校で学修した倫理社会や政治経済の総まとめになりますので頑張って受講してください。
教科書・参考書
  • 重松博之監修、野中郁次郎、鈴木寛、山内康英編著『ワイズガバメント―日本の政治過程と行財政システム』中央経済社、2021年。山本圭『現代民主主義―指導者論から熟議、ポピュリズムまで』中公新書、2021年。
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
日本の議会制代表民主主義/年度予算と執行および決算

1回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第1回の講義ではイントロダクションとして日本の年度予算の決定過程を取りあげます。年度予算の策定は議会制代表民主主義の鍵となるルーティンです。議院内閣制度のもとで、政治と行政は立法府(=永田町)と行政府(=霞ヶ関)の相互関係として結び付いています。

2
日本の行財政と予算の動向/財政赤字は本当に問題ないのか?

2回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

予算は当該年度に行政府によって執行されます。さらに次の年に会計検査院の監査を受け衆議院決算委員会において政策評価と決算を受けます。第2回の講義では「次年度の予算作成⇒当該年度の執行⇒前年度の決算と政策評価」という3つのサイクルの連鎖とこれを通じた民主主義のガバナンスについて解説します。

3
大衆社会とカリスマ/全体主義の時代

3回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第3回の講義では、民主主義の規範的な政治理論(1)として大衆社会と政治的な指導者を取りあげます。18世紀の後半から20世紀の前半にかけて、産業化と国民国家化および民主主義の基盤の拡大が同時に進行しました。大衆社会の流動化と混乱が第1次大戦後の全体主義の登場につながり民主主義に大きなインパクトを与えました。

4
民主主義における多元主義理論とは何か/ベースラインを学ぶ

4回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第4回の講義では、民主主義の規範理論(2)として多元主義をダールとその批判者を中心に解説します。多元主義理論は社会的、経済的な利害関係(interest)を組織化して表出(represent)する政治活動の自由を前提としています。この点で多元主義は自由主義=リベラリズムと結び付く訳です。

5
リベラリズムと共和主義/70年代に再興した政治哲学を理解する

5回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第5回の講義では、民主主義の規範理論(3)としてリベラリズムと共和主義の問題をロールズとサンデルを中心に解説します。第2次大戦後の経験を受けてラズレットは「政治哲学は死んだ」と主張しました。これに新たな展開をもたらしたのがロールズのリベラリズムと正義論であった、と政治哲学の研究者は考えています。

6
熟議と民主主義/民主主義の規範理論のその後の展開

6回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

1990年代以降の民主主義の規範理論をリードしたのが熟議の民主主義に関する議論です。第6回の講義では、民主主義の規範理論(4)としてサンスティーンやハーバーマスの熟議およびラクラウやムフの闘議の概念を検討します。

7
政治体制論/政治と経済の組み合わせは多様

7回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第7回の講義では民主主義の経験論的な政治学(1)として政治体制論を取り上げます。主権国家の成立に際して制憲議会は憲法を制定し、その国の政治体制を定めます。資本主義や社会主義といった政治的イデオロギー、議院内閣制や大統領制といった立法権と行政権の所在など政治体制の在り方は国によってさまざまです。

8
選挙制度の改革と民主主義的な代表(representation)について/小選挙区制の功罪

8回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第8回の講義は、民主主義の経験論的な政治学(2)として選挙制度を取り上げます。衆議院の代表を選出する選挙制度について、日本は中選挙区制から小選挙区制と比例代表制に転換しました。日本の選挙制度改革は、どのような経緯によって行われたのでしょうか。

9
日本の政党政治と政権交代/自民党はなぜ強いのか

9回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第9回の授業は民主主義の経験論的な政治学(3)として日本の政党と政権交代をテーマとします。2009年の民主党鳩山政権によってついに日本にも本格的な政権交代が起こりました。自民党は、これに先立つ長期政権をどのように維持していたのでしょうか。自民党と社会党が拮抗した55年体制とはどのようなものであったのでしょうか。

10
高度成長と産業政策および立地政策

10回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

今回と次回は経験論的な政治学(4)として具体的な政策課題を取り上げます。第10回は、戦後の日本の高度成長期の国土計画と産業立地政策を紹介し、これが情報化の進展とともにどのように推移したのかを振り返ります。

11
第2次安倍政権と平和安全法制をめぐる国会の論戦

11回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第11回は、民主主義の経験論的な政治学(5)の2番目のケーススタディとして、第2次安倍政権による平和安全法制をめぐる国会の審議を取り上げます。この論戦をめぐって国会の両院の調査室や民間の政策シンクタンクは厖大な政策資料を作成しています。今回は具体的なテーマに即して国会などの政策資料をどのように利用するのかについても検討します。

12
ナショナリズムと保守主義/相互依存と国家の役割

12回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第12回から第15回の講義では、規範的政治理論と経験論的政治学の交点となるトピックスを取り上げます。第12回の講義では民主主義国家のナショナリズムと保守主義の起源と課題を取り上げます。ナショナリズムの理論には近代以前の民族共同体を起源とする説と、近代化のなかで政府とメディアの共同作業として構成されたとする説があります。

13
批判理論と市民社会論および政治参加

13回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第13 回の講義では、西欧マルクス主義の観点から批判理論を取り上げます。このなかで戦後のリベラリズムの一翼を担った市民社会論を取りあげて、大衆社会論や共和主義の観点から再検討します。

14
リベラリズムと正義の諸構想

14回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第14 回の講義では、民主主義の規範理論を正義論から再度検討し、ロールズ以降の政治哲学を具体的な政治主張と結び付けた諸構想(conceptions)の観点から検討します。

15
政治経済思想の交替/新自由主義とポピュリズム

15回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第15回のテーマは、戦後の日本を含む先進産業諸国の政治経済思想の交替です。まず1980年代のサッチャー政権に焦点を当て、新自由主義(neolibralism)がどのように登場したのかを検討します。つぎに福祉国家の変化を規範的な政治理論および経験論的な政治学の観点から取り上げ、さらに2009年の金融危機を通じて、新自由主義が現在どのように変化しつつあるのかを検討します。

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