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科目の概要

このゼミは「情報社会論」「情報社会と総合安全保障」「民主主義論」「国際関係論」の履修者で、政治や行政の実務、外交・安全保障や軍事の歴史と動向、現在の政治状況や情報社会の調査研究に関心を持つ学生の皆さんを主な対象とします。現在の全般的な政治状況は情報通信技術の進歩と相まってVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))という以外ありません。複雑な変化のなかにパターンを見出しタイムリーに適切な判断を行う方法論を習うには修羅場を経験した実務家の経験を聞くのがいちばんです。このゼミは順次公開の教員に分担をお願いしています。年間30回のゼミを以下の3部構成とします。Ⅰ. 情報社会学と社会システム論、Ⅱ. 国際関係論と総合安全保障、Ⅲ. 民主主義の諸理論と組織のガバナンス。各部を講義と基礎論文の購読に分けて、受講生の皆さんと議論しながら授業を進めるものとします。

科目情報

履修想定年次
3年次
単位数
4単位
開講Q
通期
科目区分
選択
授業の方法
ゼミ
評価方法
レポート・成果物50%、発表・発言50%
科目コード
SOC-3-C4-1234-007
到達目標
政治学すなわち公共部門のアドミニストレーションあるいはより広義に考えて組織のガバナンス全般に関する研究には(ⅰ)経験論的な説明つまり実務に関するものと(ⅱ)規範的な問いつまり理論もしくは理念に関するものの区別があって、両者は不可分であるが、同時に後者は前者に、また前者は後者に還元できない、ということになっています。複雑な変化のなかにパターンを見出しタイムリーに適切な判断を行うためには、多様なものの考え方を用いて分析し、批判的に検討し、未来像を打ち立てる力が必要になります。このゼミを現在のVUCA状況にある知能情報社会の政治的な活動全般に関する規範的な理論と実務的な知識を涵養する一助として下さい。このゼミでは、基本的なアカデミック・スキルやデジタルツールを用いた情報収集能力、調査研究に必要な表現能力、ビジネスや行政に対するコミュニケーション能力について解説します。これによって具体的な社会課題に対して何らかの組織的なソリューションを提案するというのが、このゼミのゴールとなる到達目標です。
教科書・参考書
  • 重松博之監修、野中郁次郎、鈴木寛、山内康英編著『ワイズガバメント―日本の政治過程と行財政システム』中央経済社、2021年。村上泰亮『文明の多系史観―世界史再解釈の試み』中公叢書、1998年。
授業時間外の学修
各回の講義内容は繰り返し見返し、各回二時間ほど復習を行ってください。また、次回の学習内容についてもあらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebで調べるなどして各回二時間ほど予習を行ってください。"
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
Ⅰ. 情報社会学と社会システム論

1回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第1回から第7回は情報社会学と社会システム論をテーマとします。初回はこのゼミの3つテーマの概要を説明して参考文献を指示します。参加者の皆さんの個別の関心を順次伺って期末レポートの指導をします。教員の間の分担があるため講義の順番や内容は適宜入れ替えるものとします。(山内康英)

2
歴史主義とマクロの社会科学理論

2回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

この授業で解説する情報社会学は社会の動きを巨視的に捉えるマクロの社会科学理論です。社会を構成する個人、企業、NPO・NGO、政府といった諸主体が、どのようにして社会の相互作用やマクロの社会変化を作り出すのかを考えます。(山内康英)

3
globalizationとしての近代仮説

3回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

英国の優れた社会学者であるギデンズはglobalizationとしての近代仮説を唱えました。これはもっとも大きなマクロの社会科学理論で、近代化についての新しい視座を与えています。歴史学の分野でもグローバル・ヒストリーなど新しい研究が登場しています。(山内康英)

4
文明と文化およびナショナリズム

4回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

歴史主義は20世紀初頭のドイツの社会学に遡る歴史を持っています。ここには文明と文化の区別が繰り返し登場します。今回はゲルナーのナショナリズム論や村上・公文・佐藤の日本の社会史の長期的な分析に拠って文明と文化およびナショナリズムの問題を検討します。(山内康英)

5
人工知能と近代の認識論

5回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

人工知能については本校の多くのコンピュータ科学の授業が取りあげています。今回は、これを情報社会の認識論やプラットフォーム規制の観点から検討します。(山内康英)

6
文献講読(1)

6回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①公文俊平「プラットフォーム化の21世紀と新文明への兆し」研究総合開発機構『NIRA研究報告書』2015年10月。②村上泰亮、公文俊平、佐藤誠三郎『文明としてのイエ社会』中央公論新社、1979年。③アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』加藤節監訳、岩波書店、2000年。(山内康英)

7
文献講読(2)

7回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①アンソニー・ギデンズ『近代とはいかなる時代か ? ─ モダニティの帰結』松尾精文、小幡正敏訳、而立書房、1993年。②平子友長「西洋における市民社会の二つの起源」『一橋社会科学』2007年1月。(山内康英)

8
文献講読(3)

8回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①C.A.ベイリ『近代世界の誕生―グローバルな連関と比較 1780-1914』平田雅博、吉田正広、細川道久訳、名古屋大学出版会、2018年。(山内康英)

9
Ⅱ. 国際関係論と総合安全保障

9回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第8回から第20回は、このゼミの2つ目の課題として国際関係論と総合安全保障をテーマとします。国際関係論の分類ではリアリズムということになります。第8回と第9回をこのテーマのイントロダクションとし、引き続いて日本の安全保障政策の現状と課題についての実務的なトピックスを取りあげます。(山内康英)

10
軍事革命とRMA

10回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

経済領域と同じく軍事の領域にも繰り返しイノベーションが生じています。マレーは、軍事の領域での革新を軍事革命(Military Revolution)と呼ぶ社会的なものと軍事技術やドクトリンのレベルでのRMA(Rebolution in Military Affairs)に分類しています。(山内康英)

11
『失敗の本質』と第2次大戦の戦史研究

11回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

経営学と軍事研究は組織論の観点から重複することがあります。『失敗の本質』はビジネス書として版を重ねていますが、内容は第2次大戦の日本軍の戦史研究です。(山内康英)

12
東西冷戦と日本の安全保障

12回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

日・米の集団的自衛と役割分担を決めた「吉田ドクトリン」は、戦後の日本の安全保障の出発点となりました。東西冷戦の進展は、60年代のベトナム戦争、70年代のデタントと米中和解、80年代の東西冷戦の再燃といった10年ごとの変化によって日・米の役割分担にも一定の変化が生じました。(順次公開予定)

13
冷戦後の核軍縮、湾岸戦争とPKO、9.11

13回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第13回は、1991年のソ連邦の崩壊から2001年まで、今回の戦間期の最初の10年間を日本の防衛政策の変化から取りあげます。(順次公開予定)

14
軍備管理軍縮条約とNPT体制

14回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

軍備管理軍縮条約は国際レジームとして重要な地位を占めています。IAEAの主管する核不拡散条約は非核兵器保有国が原子力の平和利用を進める前提となるものです。今回は国際レジームの具体例として日本の不拡散体制の歴史的経緯と原子力発電所に対する核査察の実務を取りあげます。(順次公開予定)

15
国際レジームと経済摩擦

15回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

1970~80年代にドル金本位制、IMF、GATT、国際石油カルテルといった戦後の国際経済の発展を支えた政治的枠組みが大きく変容しました。半世紀後の2023年のG7広島サミットでは、経済安全保障の観点から日本の半導体サプライチェーンの再構築が合意されています。このような活動の根底にある世界システムの構造や説明の枠組みとはいったい何でしょうか?(山内康英)

16
日本の危機管理体制

16回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

2001年の省庁再編と官邸機能の強化によって日本の危機管理体制にも大きな変化が生じています。議院内閣制度の大統領化と言われるように、どの国でも行政府のトップの決定権限の強化が進んでいます。今回は日本の行政府の危機管理体制の推移について紹介します。(山内康英)

17
集団的自衛権と政府の対応

17回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第11回で取りあげた日本の安全保障体制の変化は、集団的自衛権と憲法9条の問題に関連して歴代政権の政策課題となってきました。今回は、いくつかの政権に焦点を当て国会の信義や防衛省の対応を交えてこの問題を取りあげます。(山内康英)

18
RMAとしてのハイブリッド戦争?

18回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

2008年のグルジア紛争以降、ロシア軍はサイバー空間と軍事侵攻を組み合わせて用いる新しい戦術を採用し、2014年のクリミア紛争でもこのドクトリンを利用しました。第17回は、新しい戦術のドメインとしてのサイバー空間についてロシアの軍事戦略の観点を交えて取りあげます。(山内康英)

19
文献講読(1)

19回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①山内康英「マクレガー・ノックス、ウィリアムソン・マーレー『軍事革命とRMAの戦略史:軍事革命の史的変遷 1300~2050年』野中郁次郎編著『戦略論の名著:孫子、マキアヴェリから現代まで』中央公論新社 、2013年。②野中郁次郎『知的機動力の本質―アメリカ海兵隊の組織論的研究』中央公論新社、2017年。(山内康英)

20
文献講読(2)

20回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』ダイヤモンド社、1984年。②千々和泰明『戦後日本の安全保障―日米同盟、憲法9条からNSCまで』中公新書、2022年。(順次公開予定)

21
文献講読(3)

21回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①I.M.デスラー 『日米経済紛争の解明―鉄鋼・自動車・農産物・高度技術』佐藤英夫、丸茂明則訳、日本経済新聞出版 、1982年。②山内康英『交渉の本質―海洋レジームの転換と日本外交』東大出版会、1995年。③クリス・ミラー『半導体戦争―世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』千葉敏生訳、ダイヤモンド社、2023年。(山内康英)

22
Ⅲ. 民主主義の諸理論と組織のガバナンス

22回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

今年のゼミの3つ目の課題として第22回から第30回は民主主義の諸理論と組織のガバナンスをテーマとします。今回と次回をイントロダクションとして第23回から実務的なトピックスを取りあげます。(山内康英)

23
正義の諸構想と国家の役割:再検討

23回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

ロールズの正義論以降の理論的な流れは、リベラリズムを諸構想(conceptions)として相対化、複線化するものです。今回はミラーの提起した「リベラル・ナショナリズム」の観点から国家の役割を再検討します。(順次公開予定)

24
野中理論と政策形成における知識創造

24回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第24回の講義では一橋大学の野中郁次郎教授の組織的知識創造を紹介します。ここでは野中理論が社会的知識創造として多元的な代表制民主主義における政策形成に応用できることを説明します。(順次公開予定)

25
3.11と日本の『決定の本質』

25回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

アリソンの『決定の本質』は1962年のキューバ危機に際してケネディ政権がどのような政策決定を行ったのかという研究でした。民主党政権下で突発した東日本大震災と福島第1原発事故は緊急時の日本の政治決定や安全保障の組織にどのような教訓を残したのでしょうか。(順次公開予定)

26
省庁再編と霞ヶ関の変容?

26回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

2001年の省庁再編は明治期以来の日本の省庁縦割り・調整型の行政機構を革新するものでした。第26回は、自民党の橋本・小泉内閣の主導した行政改革の最終的な成果を検討するものとします。(順次公開予定)

27
官邸官僚が本音で語る権力の使い方

27回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第2次安倍政権は日本の政策決定における「官邸主導」を打ち出しました。官邸主導を実質的に支えるのは内閣府の官僚たちです。政策決定の在り方は菅政権と岸田政権で変化したのでしょうか?第27回はこの問題を取りあげます。(順次公開予定)

28
文献講読(1)

28回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①W.キムリッカ『新版現代政治理論』千葉眞、岡崎晴輝訳、日本経済評論社、2005年。②デイヴィッド・ミラー『政治哲学』山岡龍一、森達也訳、岩波書店、2005年。(山内康英)

29
文献講読(2)

29回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①石原信雄『権限の大移動―官僚から政治家へ、中央から地方へ』かんき出版、2001年。②村松岐夫『政官スクラム型リーダーシップの崩壊』 東洋経済新報社 、2010年。③城山英明、細野助博、鈴木寛『中央省庁の政策形成過程―日本官僚制の解剖』中央大学出版部 、1999年。(順次公開予定)

30
文献講読(3)

30回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

①兼原信克、 佐々木豊成、曽我豪、髙見澤將林『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』 新潮新書、 2023年。②野中郁次郎、川田弓子、大垣交右「動態経営の本質―経営学と現象学を綜合する ヒューマナイジング・ストラテジー」一橋大学イノベーション研究センター編『一橋ビジネスレビュー』2021年春号。(山内康英)

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