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量子からはじまる確率論

[2028年度開講]

科目の概要

この世界に溢れる「確率的な現象」を捉えるための数学的理論が確率論であり、現代において確率論といえば通常は「測度論的確率論」を意味する。しかし、測度論的確率論は量子現象における「確率的な現象」をモデル化するには十分でないことが知られている。本授業では、測度論的確率論や量子論をその一部に含むほどに一般化された確率論である「非可換確率論」(量子確率論・代数的確率論とも呼ばれる)を、測度論的確率論や量子論の知識を前提とせずに学ぶ。非可換代数とその上の「状態」の概念を出発点にして量子論のエッセンスをつかみ、ヒルベルト空間などの解析に必要な数学的な道具立てに馴染んでいく中で、測度論的確率論・組合せ論・ネットワーク科学など関連する様々な分野の考え方をも身につけていくことを目指す。 本科目は演習科目に位置付けられ、学生の積極的な参加、問題演習への取り組みが求められる。

科目情報

履修想定年次
4年次
単位数
2単位
開講Q
3-4Q
科目区分
選択
授業の方法
演習科目
評価方法
レポート70% , グループワーク30%
科目コード
MTH-4-C3-0034-003
到達目標
非可換確率論の枠組みを明確に理解し、自分なりの「研究」を始めることのできる出発点に立つ。具体的には、非可換確率論とは何かを線型代数を知る人に説明できるようになり、それが自然科学にとって不可欠であることを量子論の基礎を知る人に説得できるようになり、古典的な確率論を知る人にその人にとって親しみのある話題との関係を紹介できるようになり、非可換確率論に関わる自分なりの研究課題を見つけ挑戦できるようになることを目指す。
教科書・参考書
  • 【教科書】量子確率論の基礎(明出伊類似・尾畑伸明/オーム社)2021【参考書】指数関数ものがたり(西郷甲矢人・能美十三/日本評論社)2018、L.H.Loomis,AnIntroductiontoAbstractHarmonicAnalysis(L.H.Loomis/Dover)2022
授業時間外の学修
各回の学修内容について、あらかじめ不明な単語や前提となる知識をWebなどで調べ、二時間ほど予習を行う。予習用に配られた資料がある場合、必ず目を通す。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
代数的確率空間(非可換確率空間)

1回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

「*-代数」の概念とその上の「状態」の概念について学び、その組としての「代数的確率空間」(「非可換確率空間」あるいは「量子確率空間」ともいう)の概念を理解する。

2
ヒルベルト空間とGNS構成

2回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

「ヒルベルト空間」とそれに関わる基礎概念を学び、代数的確率空間を取り扱う基本的な道具となる「GNS(ゲルファント・ナイマルク・シーガル)構成について学ぶ。

3
ベルの不等式

3回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

「測度論的確率空間」の枠組みでは表現できず代数的確率空間によって初めてモデル化できる現象が存在することを示すために用いられる「ベルの不等式」について学ぶ。

4
量子調和振動子

4回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

代数的確率空間のシンプルで実りある例として、「量子調和振動子」の概念を学ぶ。物理的な意味や「量子古典対応」についても触れる。

5
ブラウン運動

5回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

量子調和振動子と深く関連する「ブラウン運動」について学ぶ。古典的な諸結果についても紹介する。

6
ポアソン過程

6回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

ブラウン運動と並んで重要なポアソン過程について学ぶ。ブラウン運動とポアソン過程が、代数的確率空間の概念によって統一的に捉えられることを理解する。

7
量子中心極限定理

7回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

非可換確率論の枠組みから、「平均」からの揺らぎを捉える上で本質的な役割を果たす「量子中心極限定理」と呼ばれる基本定理を導出する。

8
古典中心極限定理

8回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

測度論的確率論における「中心極限定理」(「古典中心極限定理」)を、その本質がわかりやすい簡素な形で扱い、確率論における「独立性」の概念の役割について理解を深める。

9
独立性の諸概念

9回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

非可換確率論の枠組みのもとでは、古典的にはただ一つしか知られていなかった「独立性」の概念が多様化する。そもそも「独立性」とは何かという問題に立ち戻り、典型的な幾つかの独立性について学ぶ。

10
キュムラント

10回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

独立性の概念が与えられると、対応する「キュムラント」(「平均」や「分散」の概念を高次に一般化したもの)を考えることができる。今後に活用する「一般化されたキュムラント」の概念を学ぶ。

11
自由確率論入門

11回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

古典的なものを除き最も重要な独立性である「自由独立性」と、それを軸とした研究分野である「自由確率論」について、「自由キュムラント」を焦点を当てつつ学ぶ。

12
単調確率論入門

12回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

初めて登場する「非可換な独立性」としての「単調独立性」と、それを軸とした「単調確率論」を、「単調キュムラント」の概念に焦点を当てつつ学ぶ。

13
相互作用フォック空間

13回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

代数的確率空間の豊富な例を提供する「相互作用フォック空間」の概念を学び、それに関わる基本的な諸結果を概観する。

14
グラフのスペクトル解析

14回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

これまで学んだことがらを活用して、「ネットワーク科学」の基礎となる「グラフのスペクトル解析」について学ぶ。

15
展望

15回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

「圏代数」と「圏上の状態」の概念についての近年の研究を紹介するとともに、非可換確率論と他の分野との関わりについて展望する。

関連科目