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科目の概要

国際関係論は、主権国家の外交交渉や軍事行動、国際社会の相互依存関係やグローバル化を理論的・実証的に研究する学問領域です。国際関係は帝国による支配や植民地統治、人種主義、戦争と覇権国の交代、核兵器と情報戦争、先進国と途上国の格差、政治的・文化的ナショナリズムといった厄介な問題に結びついています。世界で最初の国際関係論(International Relations)の講座は、第1次大戦後にウェールズ大学のウッドロー・ウィルソン国際政治学講座として設置されました。国際関係理論は、その当時からイデオロギーと世界観によって社会状況の解釈が異なる、ということを前提として作られています。国際関係論では所与の説明のループをどのように批判的に見るのかが重要です。この授業では、英国および米国のアカデミアで発展した国際関係論の主要な理論的枠組み、その研究史と問題関心、これと関連した国際政治や資本主義市場経済の歴史的研究を解説し、批判的な判断の前提となる理論的な素材を提供するものとします。またテーマをやや広く取って、安全保障と軍事、対外政策分析、ODAの実務についても解説します。

科目情報

履修想定年次
4年次
単位数
2単位
開講Q
1-2Q
科目区分
選択
授業の方法
演習科目
評価方法
レポート・成果物50%、発表・発言50%
科目コード
SOC-4-C3-1200-001
到達目標
国際関係では議論する者の立場や観点によって、国際社会や社会状況の見える姿が180度異なります。同じ対象物をどの視点からどのような方法で分析し、情報を収集するのか、抽象的な議論に拠って現実を比較考量する方法論を身につけることが大事です。このために現実主義、リベラリズム、構成主義といった国際関係論の基礎的な理論と文献を理解し、イデオロギーの観点を合わせて政治学や国際関係論を学修します。これによって国際化の進む昨今の社会情勢や現実的な未来に関する知見を得るとともに、今後の大学や大学院での研究および将来の職務に活かすことをこの授業の到達目的とします。
教科書・参考書
  • (1)今井宏平『国際政治理論の射程と限界―分析ツールの理解に向けて』中央大学出版部、2017年。(2)岡垣知子『国際政治の基礎理論』青山社、2021年。(3)イアン・クラーク『グローバリゼーションと国際関係理論』滝田賢治訳、中央大学出版部、2010年。(4)ヘンリー・キッシンジャー『国際秩序』伏見威蕃訳、日本経済新聞社、2016年。(4)ロバート・O・コヘイン、ジョセフ・S・ナイ『パワーと相互依存』ミネルヴァ書房、2012年。
授業時間外の学修
講義で取り上げる文献を可能な限り自分で読むようにしてください。国際社会のに広く関心を持つと同時に、自分の関心領域を絞って関連する知識をwebで検索してください。
特記事項
順次公開予定

授業計画

1
国際社会と主権国家および現実主義(リアリズム)

1回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

キッシンジャーにならって国際政治の出発点をウェストファリア条約に置き、主権国家体制を作り出した17世紀以降の西欧の歴史について検討します。

2
経済的相互依存とリベラリズム

2回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

17~18世紀の産業革命を通じて資本主義的な市場経済がグローバルに拡大しました。経済的な相互依存関係は、国際関係に大きな影響を及ぼすようになり、主権国家の権力関係とは異なる理論的観点が登場しました。

3
国際社会の組織、制度、レジームを「構成する」とは何か?

3回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

政治的、経済的な相互作用を潤滑に行うためには、相互作用のプロトコルや組織、制度、合意の束つまり国際レジーム(international regime)が必要です。国際関係論の構成主義は社会学の社会的構成主義の観点からこの問題を取りあげたものと考えることができます。

4
国際関係論の「現実主義」「リベラリズム」「構成主義」/再検討

4回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第4回の講義では、これまでの3回の解説に基づいて国際関係論の「現実主義」「リベラリズム」「構成主義」を整理します。

5
国際レジームと対外政策分析/『権力と相互依存』

5回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

国際関係の理論枠組みを、個々の具体的な政治課題(political issue)に適用して対外政策を分析します。この方法論を説明するためにコヘインとナイの名著『権力と相互依存』を紹介します。

6
マルクス主義の批判理論と世界システム論

6回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

前回までの枠組みとは異なる国際関係理論としてマルクス主義の批判理論と世界システム論について解説します。

7
近代化と多層的な世界システム

7回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第7回では、ここまでの議論を総括して近代化と多層的な世界システムという情報社会学の理論について説明します。これはいわゆるグローバリゼーション理論の再検討を意図することになります。

8
相互依存と国家の役割/均衡と平衡介入の原理

8回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

近代化と多層的な世界システムという理論的枠組みから、経済的な相互依存が深化するにつれて国民国家の役割の増加することを説明します。この鍵となるのが社会システム論でいう均衡と平衡介入の原理です。

9
主権国家と軍事革命およびRMA

9回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第9回から第11回の講義のテーマを安全保障とします。今回は主権/国民国家の形成を軍事革命とRMA(Revolution in Military Affairs)の観点から分析するウィリアムソン・マレーの研究を取りあげます。

10
戦後の日本の安全保障政策/東西冷戦からカンボジアPKOまで

10回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第10回は、戦後の日本の安全保障政策の歴史的検討として東西冷戦からカンボジアPKOまでをテーマとします。1992~93年に掛けて国連の実施したUNTACはこれまでにない成功を収めました。

11
サイバーセキュリティと新冷戦?

11回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

情報化の急速な進展によって軍事を行使する新しいドメインとしてのサイバー空間が登場しました。ウクライナ紛争では一種のハイブリッド戦争が続いています。

12
世界市場と国際的なサプライチェーンの展開

12回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第12回から第14回の講義のテーマは、戦後の日本の経済成長と企業の多国籍化です。この過程で日本は数多くの経済摩擦と対外交渉を経験しました。2023年のG7広島サミットではこの問題が先端的な半導体のサプライチェーン再構築として登場しました。

13
日本のODAとASEANの社会インフラ建設

13回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

日本企業の海外展開を支援するために、日本は政府開発援助(ODA)を通じた受入国の社会インフラ整備を積極的に進めました。この結果、米国、欧州のみならず中国、ASEAN、さらには南アジアに及ぶ高度で緊密な分業体制に基づくサプライチェーンを構築することになりました。

14
開発主義と近代化論/イデオロギーと国際関係

14回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

戦後の日本の経済成長と政府の役割を開発主義(developmentalism)と近代化論の観点から検討します。近代化論はライシャワーやロストウの主導した政治経済思想でマルクス主義に対抗するイデオロギーの役割を果たしました。

15
日本の外交課題と2022年の安全保障3文書

15回開講日時:
2099年4月1日(水) 00時00分より

第15回は2022年12月に岸田政権の策定した「防衛3文書」を中心に現在の日本の外交課題を取りあげて講義の総括とします。

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